第3回

到着したBbAを取りづらいったらありゃしないと思いつつもモデムを外し、外早速付け替え、同僚の指示に従い接続開始。
但し、ここで大きな落とし穴があった。

何度やっても接続できない為話をすると、初回の接続は電話線を通さないと自分の情報が記憶されない事が判明。
要はBbAをきちんと考慮した形じゃなかったからだとは思うが、不親切だなぁとか当時思ったものである。

仕方がないのでBbAを外し、再度モデムを接続。
ISAOの情報を取り、接続可能になったDCのモデムを外し、それなりにドキドキしながら再度BbAに付け替え、PSOの世界に接続を開始する。

逐一電話でやり取りをしながらシップ選択等に戸惑いつつも初めてネットワークにて対面。

今まで見たことのない、ロビーという物が表示された瞬間だった。
その時のことは純粋に感動をした事を覚えている。

ロビーにてしばしレクチャーを聞く。
このときは、殆ど舞い上がっていたので何を言っていたのか申し訳ないが覚えていない。
ただ、ここから先は自分がやったことのないゲームが始まると言う期待感は覚えている。

そしてまずはパスワード付きで部屋という物を作ってもらい、わけも解らず入室。
そこから先はいつもと変わらないのに、目の前に会話を返せるNPCじゃないキャラクターが居る。
等身もきちんとしているこのゲームだからこそ思えた、リアルな隣人がそこに居る感じ。

正直わくわくした、今まで十数年ゲームはやってきているが、やってきたゲームでわくわくしたゲームは正直言って数少ない。
名前なんて簡単に列挙できるくらいしかない。
ここではあえて書かないが…

会話が色々始まる。
ここでキーボードの重要性を知る。
確かにこのゲームでは必要である、なければコミュニケーションはかなり難しかっただろうと悟る。
一人のゲームじゃわからなかった部分である。

会話中は戦闘に付いての色々なレクチャーを聞く。
ある程度のノウハウは勿論先にキャラメイキングをしている為解っている、ここで話をしたのは二人、もしくは複数人で戦う為にはという話である。
そして準備を整え、初めて二人で戦場へ。

何度も見たはずの森。
でも知り合いが何故かそこに居る異質感。
インテレビジョン、カセットビジョン、高速船、SCシリーズ、FC、MK3、マスターシステム、SFC、MD、PC-E、PC-FX、サターン、バーチャルボーイ、PS、PS2、N64、GG、GB、GBA、NEO−GEO、基盤 etc…

あらゆる物をやり、そして所持した。
対戦、協力色々複数人でやるゲームもあった、でもそれは隣にコントローラーを持った知り合いが居た。
その知り合いたちが集まった空間でのみ出来るゲーム。
…でもこのゲームは違う。
分身となるであろう動きもNPCと違う、だがプログラムで作られたキャラクターが確かにそこに居る。

DCは違った、いや、そのDCで出来るファンタシースターオンラインというゲームがこの瞬間から他の物と明らかに違うように写った。

自分の中の期待が高まる。
協力プレイと言う物がこんなに爽快感があるものだとは正直思わなかった。

日常でいかに仲の良い知り合いが居たとしても簡単に、かつ協力というシチュエーションが生まれる事は正直殆ど無いと思う。
無論、持ちつ持たれつと言う意味での協力と言うのはあると思うが、ある意味戦いの空間と言う場所での協力という物は仕事場でもそう爽快感が出る物ではないと社会を経験している自分は思う。

だがここは違う。
協力しないと殺られるかも知れない、この緊張感を求められる。
もちろん、リアルな生き方としてそんな人生はまっぴらごめんである。
あくまでゲーム、されど、その偽者の空間にこのゲームは上手く作られていると思った。

そして、初めて最初のボスを倒したとき、このゲームに「これははまる」と確信した。
その後はPSOべた褒め街道まっしぐらである。


……あの日までは。

 

しばらくの間この同僚との協力戦闘が続く。
同僚のキャラは、先にやっていたこともありSolのLvを挙げるのにも効率がよく進んでいく。
Solが敵の防御や攻撃を下げて逃げる、同僚が倒す。
コレの繰り返し。
正直Ver1で一番楽しかったのはこの時期である。

毎日リアルな知り合いともぐる。
たまには鍵なしで部屋を作るが基本的にリアルな知り合い意外と顔の見えないネットで話すことが嫌いな自分は鍵無し部屋を好んだ。
パソコン通信と呼ばれたのが全盛期だった頃から通信という物は遠方に住むリアルな友人との会話とダウンロードにしか使わなかったと言う筋金入りのネット疑心暗鬼者である私は次第にこの鍵なし部屋が嫌になってきた。

知らない人が入ってくる不快感。
無論全員マナーが良い人ならそんな不快感も出ないが、そうも行かないのが現実。
しかもネットと来れば、部屋を荒らすだけ荒らして出て行く人も居る。
ますます鍵付き部屋が欲しい、そんな事を考えていた頃だった。

その日はたまたま鍵なし部屋を好む同僚の意見に賛成し、鍵なしの部屋を作った。
一人目の人が「参加してもいいですか?」と入ってくる。
礼儀正しい方なんで断る理由も無いため「良いですよー是非」のような会話をした。
問題は次の入室者。

終始無言で入ってきたその二人目は、同僚が「どうしました?」的な問いかけをした事に対し「今何処にいる?」と答えた。
坑道を模索していた為「坑道です」と答えると、「じゃあパイプ出して」との事。
この頃思ったPSOの嫌な所として、こう言う輩が来たときにぶん殴るアクションか、部屋を作った人に強制退去権とかがない事が少々不満だなと思っていた。

言われるままパイプを出し、その二人目が来るのを待つ。
その間、電話で「やな感じの奴だな」的なことを同僚と会話。
そうこうしている間にキャラクターが表示される。

自分たちが「こんにちは」と挨拶するが、相手は無言でアイテムを置いていく。
そして一言「欲しいだろうからすきなの取りな」との事。

ますます態度にむかつきつつ、そのアイテム群を見ると、あえて書かないがダブル何ちゃらやハートな杖やら、まだ見たことの無いアイテムの名前が表示された。
当時のLvなんて20行くか行かないかくらいを彷徨っていたので、こんなものを見せられても一向に価値がわからなかった為「いらないです」と答えると「珍しい物で欲しいのは解ってるんだからもってけよ」との事。

ますます欲しくなくなったんで価値もわからないからほんとにいらないと答えようとすると、同僚が「よく集めましたねー」的な事と「でも気持ちだけ貰っておきます」と言う事を言った所、じゃあ欲しけりゃとっていらない奴は勝手に処分してくれと言ってさっさと出て行ってしまった。

その後、同僚から「これは多分チートだね」という言葉を初めて聞く。
チート…データを改ざんして、自分の欲しい武器を作る。
それと似たような形でデータ改ざんではなく複製をするデュープ。
ただ、正直自分にとってはその行為自体特に物珍しいことではない。
元々データ改ざんは趣味の域で良くやっていた。

無敵やLv上げ、アイテム取得なんて事はPC-6001やMSX等のマイコンだかパソコンだか呼び方はどうでも良いがそんな時代から常にやってきた事。
物珍しい事どころか感覚としては普通で、やって当たり前、やらなくてもいいゲームは本当に面白い物という考えが確立しているくらいである。

だが、同僚はきっぱりと言ってのけた。
「ネットワークゲームは他人との協力が大切で、ローカルなゲームでは確かに改ざんは問題ないと思うけど、ネットゲーでもそれをやられちゃうとバランスも崩れるし、何よりレアを発掘するっていう面白みが無くなっちゃうからチート、デュープは大嫌い。自分たちでゲームの命を縮めている、なんでそんな簡単な事が解らないんだろう?」と。

正直、この時の自分はどっちでも良いと言うのが本音だった。
特に武器に関しては自分が気に入った物があればそれ位使っても良いのでは?的なことを考えていた。

だが、この時既にPSOを紹介してくれたいわば同僚を恩人と言えてしまう位PSOにはまり込んでいた自分は、この同僚の意見を尊重しようと考え、以後、このゲームにてそう言った類の者と関わらないようにする事を誓う。

…しかし関わり合いは衰えるどころか一方的に増えるばかりであった。

Ver1の頃からやっている方は知っていると思うが、Ver1のPSOはネット接続中に蓋を開けたり電源を切ったりするとアイテムやメセタが全てロストすると言う仕様であった。

ただ、これは故意にそう言った事をした結果ならば仕方ないが、接続中にフリーズなどをしてやむを得ず電源を切らなければならない場合でもこの洗礼を受けなければならない。
そしてそれが繰り返される事で嫌気がさし、チートに走る。

…当時の定説である。


自分たちは、鍵なしで入ってきたプレイヤーから貰う怪しげな物は全て貰わないか、場の雰囲気で貰わなければならなそうな物は悪いとは思ったが一旦貰った後そのプレイヤーが去った後その場にアイテムを置き、部屋を閉めて全てのアイテムを捨ててきた。


そんな事をしている中、Solも多分にもれずロストの洗礼を受ける。
シップからシップに移動する際、画面が完全に止まる。
LANケーブルを抜いて自動セーブを待つが駄目。
何のボタンを押しても駄目、ソフトリセットも不動。
…電源を切るしかなくなった為、電源を切る。
オールロスト。

キャラクターとLv以外は全て消え去るまさに地獄のような状態。
現在なら正直笑って過ごせるロストだが(何度も経験して打たれ強くなった為(苦笑))、当時は前日に爪が取れてはしゃいでいた時期である。
大げさかも知れないが、引き裂かれるような思いだった。
即座に同僚に相談、そしてこの仕様はあまりにも酷でもう味わいたくないのでPSO自体を一旦止めようかと思う事を告げる。

同僚は自分を励ましてくれ、キャラクターが失ったわけじゃないからまた続けられる、と言う事を言ってくれた。
そして、Solはまた裸一貫からアイテムを集め始めた。

だが、その相談をした後、同僚は自分とあまり潜らなくなる。

 

数日後、久しぶりに同僚のキャラクターを発見し、部屋を作り「最近あまり会わないネェ」と言うような事を切り出すと、同僚はチームに入ったのだと言う。

個人的に、誘ってくれた人が誘った側をほっといて別なグループに行くなんて事はあまり考えられなかったんで「なにそれ?」とも思ったが、自分に拘束する権利なんて無いので黙っていると、チームの話をポツリポツリとする。
どうやらチーム自体の雰囲気は良いけど、チート許可のチームで、もう少し話を聞いてから入れば良かったとの事。
ただ、「自分はチートの部分に触るつもりは無いからその辺の切り分けははっきりして付き合っていく」と言っていた。

…だが、その時を境に同僚は確実に変わっていく。


しばらく一人で潜る日が続く。
暇なのでたまには鍵をつけない日もあったが、そう言う日に限って見せびらかし君がやってくる。
また鍵をつける。
悪循環である。

そんな事をやっているうち、久しぶりに同僚のキャラに会う。
しばらく雑談とちょっとしたクエストを終わらせ、また雑談をしたあと、「ちょっと振ってきてもいいかな?」という台詞が帰ってきた。
何を振りたいのか解らなかった自分はそのまま素直に質問する。
すると、人から貰ったレアを見てみたいんだとの事。

決まりきった文句だが一応聞いてみる「それってチートじゃないよね?」
それに対しての返答が「いや、多分チート」とさもあっさり答える同僚。

チートって解りそうなのは以前は捨ててなかったか?
確実に違和感となって返ってくる。

そして次に「まあでも振るだけで実際に使わないから
…それは違うだろう?と思いつつも「それを振った後使わないならどうするの?」と聞いてみた。
その時望んだ回答は「捨てるよ」だった。
だが返ってきた返答は「倉庫キャラが居るからそっちに移動する」であった。
更に、今まで捨ててきた事を言うと「んーでも貰った物を捨てるのも悪いしネェ」確実に考えが変わってきている状態だった。

PSOにおけるガイドラインはある意味自己に任せられている。
だからこそ、自分の参加を希望したこの人をガイドラインにした自分はこの人が言っている事が信じられなかった。

その後、会うたびに初期とは明らかに違う事を言ってくる。
Ver1にあった有名なバグ技で壁抜け技、部屋一帯ダメージ技、マグ増殖技 etc…
壁抜けは特に、「協力し合うのがこのゲームの醍醐味だからタブーだよ」から「一人じゃオンラインで先進めないじゃん、だから仕方ない事」になっていた。

始めにチートを否定され、それに対して躍起になりこの同僚が目指していた物を見習っていた自分はこのとき完全に頭に来た。

そして「君はチート全般やこの世界を壊すような事を否定するんじゃなかったのか!?」
と言う事を突きつけた。

すると、「チートは今でもいけないとは思う、でもバグ技は初めから何も改造をしないで出来るわけだしこれはPSOの世界に初めからあるわけだからやる事に対して文句をいわれる筋合いはない」との回答をしてきた。
ちなみにこの頃、ソニチからは壁抜けしないでくれとのアナウンスがされていた頃である。
無論その事はこの人も知っていての発言である。

そして次に言った事が自分たちの関係を完全に破壊する。
「でもチートは、普通にやっていても見れない物が見れるんだよ、配布するわけじゃないし誰にも迷惑かけてないじゃない?それに自分のDCはMillCD対応じゃないから自分が作っているわけじゃないんだしさ、つまり自分はチートしてないんだからOKでしょ?」

…それを言いたかったのはむしろ自分の方である。

自分のDCは古い。
逆にこっちはMillCDなんて当たり前に対応をしている
つまり「改造なんていつでもできる、しかもスーチーで使った改造ツールもある、もし持っている物が使えないのなら新しいタイプのツールを買ってきても良い」正にオールレディ状態である。

でもこの人を尊重して使わなかった、それだけの事。
今この事を改めて口論したら多分そんな事は言っていないといい始めるかもしれない。
だが言っていたからこそここまでこじれたのが事実である。

そして更に追い討ちをかけるその人の一言。
「以前オールロストをした時に、なんでわざわざそんな事を報告するんだろうって思っていたんだよ。正直あの時はPSOやめるのをとめたけど、やめるやめないなんて自分の問題でしょ?やめたきゃやめればよかったんだよね」

そこまで言われたのならこちらも言い返す。
「なら、何で自分を誘った?リアルな知り合いでPSO仲間が欲しかったからじゃないのか?なぜこの世界に引きずり込んだ?初めからネットで知り合いを作りそっちがメインになるなら自分を誘う理由なんか無かったんじゃないのか!?」

その人は黙ってしまった。

…この回答は未だに返ってこない。
そして、家にまで遊びに行った事のあるこの同僚とはそれっきりになった。